生きて、切り刻まれても:memories of Richey Edwards

90年代初期のイギリスのロックバンド、Manic Street Preachersのギタリストだったリッチー・エドワーズの失踪から今日で19年だという。

過去に何度となく触れているが、私はリッチーが好きだった。
物ごころついてアルバムを買ったころには、すでに彼は姿を消してしまっていたけれども。こうして振り返ると、どうにも私は好きな人間とはすれ違ってしまうことが多い気がしている。
あの頃のようにマニックスを聴くことはほとんどなくなってしまったが、私の中で、リッチーがいたころのマニックスはまったく同じ場所で輝いている。





新しい場所になったこの日記でも少し触れよう。
Manic Street Preachersは1986年、ウェールズで結成された。メンバーはThe Clashに影響を受け、当時としても時代遅れだったろうパンクとハードロックを一緒くたに混ぜた音楽で、ポップなメロディーに政治的・攻撃的な詞を乗せての登場だった。
「30曲入り2枚組のデビューアルバムで、世界中でナンバーワンをとって解散する」
当時デビューしたばかりの、若い彼らの大言壮語がいきなりこれだった。
すさまじく痛々しい。しかし、いっそ愉快ですらある。
当然メディアは好奇の目線で彼らの言動を追った。その後完成したデビューアルバムGeneration Terroristsは世界でナンバーワンを取ることはなく、CD2枚組でもなく(レコードは2枚だったらしい)、解散もせずに彼らは2ndアルバムを制作することになる。

Motown Junk(1991/Marquee)



マニックスは技術的には当初どん底だった。ヴォーカルのジェームズ・ディーン・ブラッドフィールドの声はみずみずしくも初期衝動に満ちていて、彼の素晴らしい声とたぐいまれなポップセンスがバンドをけん引していたことは間違いないだろう。リッチーの場合、言ってしまえば技術よりむしろ世間に対する行動にこそ、彼の「ギタリスト」らしさがあった。
彼は最初から悲劇的な側面を持っていたのかもしれない。デビューアルバムの発売の前に、某音楽誌の取材で彼らは侮蔑を受ける。怒ったリッチーはすぐさま腕に「4 REAL」と切り刻んでインタビュアーに見せつけ、17針を縫う大けがを負った。
「俺たちは本気だ」
馬鹿馬鹿しい。けれども、この言葉ひとつに一体どれだけの思いが込められていただろう?
彼には衝動的な行動の反面、どこか繊細さもあった。文学にも造形が深く、マニックスの精神性ともいえる詞を書いていたのは、同じく当時リズムギターを担当していたニッキー・ワイアーとリッチーの二人だった。
彼の内なる闘いは恐らく腕の傷くらいでは終わらなかったはずだ。
ポップさの増した2ndアルバム、神経にぎりぎりと響く批判的な音に満ちた3rdアルバムHoly Bibleを経て、リッチーは精神病を患う。
Holy Bible発表時、BBCのTop of the Popsに出演した彼らは、Fasterを演奏。ジェームズはテロリストが被る帽子を被っていたことで、BBCは過去最多の抗議を受けたという。1994年12月、アストリアでのライブがリッチーの最後のライブ出演となった。


1995年2月1日のことだ。
リッチーはベイズウォーターロードにあったエンバシー・ホテルを午前7時にチェックアウトした。それから行方が分からなくなった。彼の車は約2週間後に見つかったが、手掛かりはなかった。バンドは半年ほどの休止期間を経て音楽活動を再開し、現在に至っている。
2008年になって、リッチーの家族は正式に「死亡の見込み」との声明を発表した。

最初に彼を知ってからもう15年くらいが経つ。
私はリッチー自体を結局見たことすらなかったのに、好きだった。
「本当だ」と叫ぶことは恐ろしくて、勇気がいる。それでも叫ばずにはいられなかった彼が愛おしかった。その一方、彼がバンドにいないことが悲しかった。好きだったはずのバンドや音楽に、彼の居場所がなくなってしまったなんて、後から知るには辛すぎた。
今でもリッチーは生きている、と信じるファンは多い。失踪後、世界中で彼の目撃情報が挙がっている。
たとえば、世界のどこかで、釣りでもしてのんびり暮らしているんじゃないか。
変わらずに誰かに食ってかかっているんじゃないか。
自分がいたバンドを遠くから眺めて、笑ってるんじゃないか。
見つかっていないのだから、それはありえる話だ。私はできればそっちを信じたい。
リッチーはすべてを捨てて、自由になった。もしかしたら名前も何もかも変えて、違う場所で違う人間として生きているかもしれない。
そんな不敵な行動すら、あのリッチーならありそうな気がしてくる。
バンドは新たなメンバーを加えることなく、ブリットポップの狂乱や数々のバンドブームを経て、今なお変わらずに活動を続けている。趨勢の早い音楽シーンで、これはすごいことなんじゃないか。ずっとリッチーのことばかり言うのは、長年のファンには失礼かもしれない。だけど元々のメンバーだし、好きなんだからしょうがないよ、とちょっと許してもらえると嬉しい。

ところで、Holy Bibleのブックレットには、それぞれ文学や誰かの言葉からの引用が歌詞の前についていた。
リッチーとニッキーが詞を書いたFasterには、シルヴィア・プラスの言葉。それが気に入って、意味も分からず何度か書いていた。
I talk to God, but sky is empty.
「神に向かって話しかけてみても、そこにあるのは空虚のみ」

 恥ずかしいけど、「リッチーそのままだな」って思っていた。
昔も今も。

fasterがすごく好きだったので、続きに歌詞を隠しておく。

Manic Street Preachers – Faster

I hate purity,
Hate goodness,
I don't want virtue to exist anywhere,
I want everyone corrupt

I am an architect,
They call me a butcher,
I am a pioneer,
They call me primitive,
I am purity,
They call me perverted,

Holding you but I only miss these things when they leave,
I am idiot drug hive,
The virgin, the tattered and the torn,
Life is for the cold made warm and they are just lizards,
Self disgust is self-obsession honey and I do as I please,
A morality obedient only to be cleansed repented,

I am stronger than Mensa, miller and mailer,
I spat out Plath and Pinter,
I am all the things that you regret,
A truth that washes that learnt how to spell,

The first time you see yourself naked you cry,
Soft skin now acne,
Foul breath so broken,
He loves me truly this mute solitude I'm draining,
I know I believe in nothing but it is my nothing,

Sleep cannot hide thoughts splitting through my mind,
Shadows aren't clean, false mirrors too many people awake,
If you stand up like a nail then you will be knocked down,
I've been too honest with myself I should have lied like everybody else.

I am stronger than Mensa, miller and mailer,
I spat out Plath and Pinter,
I am all the things that you regret,
A truth that washes that learnt how to spell,

So damn easy to cave in, man kills everything,
So damn easy to cave in, man kills everything,
So damn easy to cave in, man kills everything,
So damn easy to cave in, man kills everything

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